【DEIBA/個と組織⑥】静かな離脱と再接続
名簿には“在籍”していても、心はもうそこにいない
──静かなる離脱を防ぐには
ある日、ふと気づくんです。
「今日、誰とも目を合わせていない」
「会議で一度も話さなかった。いや、話す必要がなかった」
「別に辞めたいわけじゃないけど、ここにいる意味って何だろう」
これは、誰かが突然会社を辞める前触れではありません。
もっと静かで、誰にも気づかれない“離脱”です。
心のエンゲージメントが抜け落ちたとき、人はまだ「名簿上のメンバー」でありながら、心理的にはすでに不在になっています。
この状態を、最近では「静かな退職(Quiet Quitting)」とも呼ぶようになりました。
でも、これは“やる気がない人”の話ではありません。
むしろ、真面目で責任感のある人ほど、心が静かに折れていく。
「何を言っても無駄だ」
「自分がいなくても大丈夫だろう」
そんな思いが積み重なり、やがて心を閉じてしまうのです。
私は、研修の現場で「すでに心が離れかけている人」に何度も出会ってきました。
彼らが語るのは、“不満”ではなく“諦め”です。
そしてその多くが、「誰にも気づかれなかったこと」が、一番つらかったと語ります。
だからこそ、私たちには問うべきことがあります。
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今、誰かの声が聞こえていないのではないか?
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一見元気そうに見えるあの人が、実は“静かに”いなくなりつつあるのではないか?
エンゲージメントを数値で測る前に、“人の気配”を感じ取る力が必要です。
そして、自分自身もまた、気づかぬうちに心を引きはじめていないか、立ち止まって見つめてみること。
“離れそうな心”には、必ず理由があるのです。
大切なのは、そこに耳を傾け、問いかけをやめないことです。
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